千里ニュータウンにお住まいのみなさまから、就学・就職・転勤などで他の地域に転居された千里ニュータウンのOB・OGのみなさまから千里ニュータウンの思い出をお聞きしています。

「人研ぎ」でよみがえった青山公園のすべり台

千里ニュータウンを歩くと、土地の高低差に気づきます。これは千里ニュータウンが丘陵地(千里丘陵)に開発されたことの名残りですが、千里ニュータウンの公園には土地の高低差をいかしたすべり台が多数あります。
それらの土地の高低差をいかしたすべり台は、設置から60年近くが経過して劣化、老朽化が進み、遊具の安全確保に関する指針(※)に合わないなどの理由で既に閉鎖されたものもあります。そうした中、青山台の青山公園にあるすべり台は、2022年に改修されました。

土地の高低差をいかしたすべり台は、「人研ぎ」という工法で作られています。「人研ぎ」とは「人造石塗り研ぎ出し仕上げ」の略で、セメントなどに細かい種石(大理石を砕石したもの)と顔料を加え、水に混ぜて塗ったものを十分に固めた後、グラインダーなどで表面を研磨して、人造石を作るという工法です。2022年3月完工の青山公園のすべり台の改修も、「人研ぎ」によって行われました。

「人研ぎ」は職人の技術と手間暇がかかる工法です。青山台のすべり台の改修をしていた年配の方に伺ったところ、近年では職人が減っており、「人研ぎ」によってすべり台を作る機会も減ったため、技術を継承するのが難しくなりつつあるとのこと。そのため、青山公園のすべり台の改修は若い世代に技術を継承する機会にもしたいと話してくれました。

職人の技術と手間暇を必要とする「人研ぎ」によって作られたすべり台は、今では非常に貴重なもので、青山公園のすべり台が改修される様子をご紹介させていただきます。


  • (注)「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」(改訂第2版、平成26年6月)、国土交通省都市公園緑地・景観課

青山台のすべり台の改修の様子

青山公園の3レーン式のすべり台は途中に踊り場のある形になっています。上部のスタートの場所には自転車やスケートボードなどの侵入防止用の柵は無く、着地場所は枯れ葉や小石などのゴミが入り込む砂場になっています。写真をよく見ると、表面にはひび割れも見られます。

(2022年1月5日撮影)

すべり台の改修工事が始まりました。

(2022年2月23日撮影)

写真は手すり部分(両側の手を掴む部分)を荒砥ぎしている様子。粉じんが発生するため、マスクを着用しての作業となります。

(2022年3月2日撮影)

(2022年3月3日撮影)

セメントに、種石となる大理石(5mm以下の寒水石)と顔料(色粉)を水に混ぜ、鏝(こて)で塗っていきます(鏝塗り)。それを、サンダーやペーパーで研磨して表面を仕上げていきます。
小さな穴は、セメントのノロ(セメントを水だけで練ったもの)を指につけて、指先で補修します。

(2022年3月8日撮影)

(青山公園のすべり台の改修で実際に使われた種石)

「人研ぎ」で改修されたすべり台の表面はツルツルになり、太陽光を反射して光っています。

(2022年3月13日撮影)

図面を見ながら、メジャーで測定して手すりの高さなどを検査しています。

(2022年3月14日撮影)

2022年3月25日、青山公園のすべり台が完成しました。平成26年の遊具の安全確保に関する指針により、上部には金属製の黄色の柵が設置。また、以前は砂場に滑り降りるようになっていましたが、改修ではセメントで作られた土台の上に、接着剤(セメダイン)で貼り付けられた安全マットに置き換えられました。

(2022年3月30日撮影)

職人の技術と手間暇を必要とする「人研ぎ」によって作られたすべり台は、今では非常に貴重なものです。千里ニュータウンの高低差を生かしたすべり台は、他にも2016年に藤白台のふじのき公園のすべり台(15人が同時に滑れるワイドなすべり台)が、「人研ぎ」によって改修されています。

(更新:2022年4月29日)