千里ニュータウンにお住まいのみなさまから、就学・就職・転勤などで他の地域に転居された千里ニュータウンのOB・OGのみなさまから千里ニュータウンの思い出をお聞きしています。

千里ニュータウン“謎”の車止め(読売新聞, 2017年2月7日)

『読売新聞』に新千里北町の車止めについての記事が掲載されました。


「幾何学形」「動物形」50期以上
千里ニュータウン(NT)の新千里北町(豊中市)の道路に、大量のユニークな「車止め」がある。近畿大の大学院生が調べたところ、動物や幾何学模様のものが50基以上も点在していることが判明。なぜ、そうした車止めが大量設置されたのかは不明だが、調査を支援した団体は「街の歴史であり、住民に地域の宝物として再認識してもらえれば」としている。(南省至)

千里NTについては、住民や近畿大学教授が共同代表を務める「千里ニュータウン研究・情報センター」が街並みの調査・研究をしており、今回、同大学大学院の武部俊寛さん(24)が車止めの数や特徴を調べ、センターが支援した。
センターによると、千里NTでは、欧米の事例を参考に「歩車分離」の道路体系が導入された。1966年に街開きした新千里北町でも車が通行するための道路が整備される一方、学校や公園などへの歩行者専用道路が設けられ、その際、車止めが設置されたという。
車止めといえば、逆U字形の鉄製のものがおなじみだが、新千里北町では、四角いコンクリート板に丸や四角形、逆三角形の穴がくりぬかれた「幾何学形」と、動物をかたどった「動物形」がある。武部さんの調査では幾何学形が28基、動物形は24基。動物形はキリンやイス、ゾウ、カメなど9種類があった。
こうした大量のユニークな車止めは、NT内のほかの地区ではあまり見られないという。なぜこうした形のものが採用されたかについては記録がないというが、センターの共同代表、太田博一さんは「設計者が、新しくできる街の景観を楽しく彩るアクセントとして考案したのでは」と推測する。
設置された場所の特徴から読み取れる法則も見えてきた。歩道の進入口や公園のそばには、動物形が多く配置。高低差がある歩道には高い方に逆三角形の穴が開いたものが置かれていた。
武部さんは「動物の車止めを公園の近くに置くことで、子どもが突然飛び出すかもしれないと、ドライバーに注意を呼び掛ける役割を持たせたのでは」と話す。
車止めは市の管理といい、子どもが遊具にして遊んだり、道案内や待ち合わせの際に使ったりしてきた。近年、建物の建て替えや道路工事の際に撤去されたり、鉄製の車止めに置き換えられたりするケースもあったが、撤去後、「元に戻してほしい」と復活させた場所もあるという。
武部さんは1月中旬に調査結果について住民らに発表。「車止めは地域のアイデンティティーになっており、どのように残すのかを考えるきっかけにしてほしい」と訴えた。センターは今後、塗装が剝げた車止めを塗り直すことなどを地域に呼び掛けたい考えで、ライトアップさせる催しを開く構想もあるという。
太田さんとともにセンターの共同代表を務める近畿大の鈴木毅教授は「均質的な街だと思われがちなニュータウンだが、街の歴史や個性を再発見できたことは意義がある」と述べ、太田さんは「調査をきっかけに、住民たちに自分たちの街の魅力を知り、誇りを持ってもらえたら」と話している。


*「千里ニュータウン“謎”の車止め」・『読売新聞』2017年2月7日