千里ニュータウンにお住まいのみなさまから、就学・就職・転勤などで他の地域に転居された千里ニュータウンのOB・OGのみなさまから千里ニュータウンの思い出をお聞きしています。

千里中央・セルシーの価値と可能性を考える

千里中央の商業施設・セルシーが話題になっています。セルシーは1972年にオープンした商業施設で、スーパーマーケット、飲食店、衣料品などが営業するほか、屋外のセルシー広場は新人歌手の登竜門としてその名が知られており、これまでにライブ、コンサートをしたアーティストには川中美幸(1990年)、岩崎宏美(1983年)、ビリーバンバン(1989年)、松浦亜弥(1999年)、AKB48(2006年)、きゃりーぱみゅぱみゅ(2012年)などそうそうたる顔ぶれが並んでいます。千里にお住まいの方にとっては、単に買物をするだけではなく、ライブを見に行ったという人や、プールに泳ぎに行ったなど大切な思い出の場所でもあります。

セルシーは現在、所有者の賃貸契約を更新しないという姿勢により、賃貸契約の切れた店舗が次々に空き店舗になっているという状況です。

「大阪府豊中市の千里ニュータウンの中心部にあり、1972年にできた大型商業施設「セルシー」の半数近い店舗が、年末で閉店する。所有者側は賃貸契約を更新しない姿勢を示しており、来春以降さらに立ち退く店が増える可能性がある。所有者側から事情説明はなく、関係者は困惑している。
・・・(中略)・・・
店舗の半数強が年末までの定期契約で、契約が切れれば空き店舗になる。他の店舗は正当な理由がないと契約を破棄できない普通契約だが、所有者側は解約を迫る構えで、今後、各店と管理会社が交渉に入る見通しという。管理会社の阪急阪神ビルマネジメントの担当者は「現時点で取り壊しなどは決まっていない。当社は委託を受けている立場で、今後の計画は知らない」と説明。信託の受益者になっている合同会社が所在する会計事務所の担当者は「取材には応じられない」としている。
*吉村治彦「ローマ風建築のSC、揺れる年末 退店続々、困惑広がる」・『朝日新聞』2016年12月20日

千里中央では、2009年にタワーマンションが竣工。現在も、かつてよみうり文化センターだった場所にタワーマンションが建設中。セルシーもタワーマンションに建て替えられるのではないかという憶測も出始めています。

2017年1月11日、毎日放送(MBS)の夕方の番組「VOICE」でもセルシーの現状が取り上げられ、当センター共同代表の鈴木・太田が取材を受け、セルシーについてコメントさせていただきました。

番組の短い放送時間では十分にお伝えするのは難しかったかもしれませんが、コメントでは、セルシーをはじめとする千里ニュータウンが掲げる問題として以下の3つをあげました。

  1. 「主(あるじ)の交代がうまくいっていない」・・・・・・千里ニュータウンは当初大阪府によって開発・管理されていましたが、特に「千里センター」が解散した後は、千里ニュータウン全体(市域や分野を越えて)に目を配る組織が存在しなくなった。
  2. 「千里のモダニズムを生かしていない」・・・・・・千里ニュータウンにはセルシーに限らず、日本の高度成長期の遺産や思い出の場所が多数あったが、それらの価値が顧みられることなく建替えにより次々に失われている。
  3. 「本当に良い住環境?」・・・・・・かつては緑や住宅のスペック、立地が住環境を評価する物差しであったが、現在では子育ての環境が充実していること、女性でも高齢になっても働けることなどの価値が評価される社会に移行しつつある。他の地域では当然なされているこうした良い住環境についての議論が、千里ニュータウンではなおざりにされている。

こうした現状をふまえた上で、千里ニュータウンをより良い町にするためには、「セルシーは簡単に販売できる大型マンションに建て替えるのではなく、リノベーションして新しい店、サービス、ビジネスを育てる拠点にしてはどうか」という趣旨のコメントを出させていただきました。