千里ニュータウンにお住まいのみなさまから、就学・就職・転勤などで他の地域に転居された千里ニュータウンのOB・OGのみなさまから千里ニュータウンの思い出をお聞きしています。

北丘小学校(新千里北町)での出前授業(2016年10月)

2016年10月7日(金)、新千里北町の北丘小学校にて車止めの「出前授業」を行いました。

ディスカバー千里では新千里北町の戸建住宅エリアを中心に多数設置されている特徴的な車止めに注目し、調査を続けています。この日の事業は、子どもたちに地域や車止めのことを知ってもらうことと同時に、子どもたちから車止めについての思い出を伺うことを目的として行うことになりました。授業の対象は小学校4年生の45人です。

この日はディスカバー千里のメンバー、近畿大学建築学部建築計画研究室(鈴木研究室)の学生が授業の進行、サポートのために参加しました。

メンバーらは8時に北丘小学校に集合し、「大きな本」の搬入、事業の進め方の確認を行いました。
8時45分から出前授業がスタート。最初にスライドを使いながら新千里北町の成り立ちを紹介。千里ニュータウンができた頃は都市に人口が集まり家が不足していたこと、新千里北町は豊中市域で最初に造られた町であること、1つの町(住区)に1つずつある小学校は子どもが通う場所であると同時に、地域にとっての中心となる場所であること、そして、車に合わずに歩けるように道路システムが工夫されて計画されていること。これらを子どもたちに紹介していきました。
次に近畿大学のTさんが、クイズも交えながら車止めを紹介。クイズは新千里北町に車止めはいくつあるか?(答え:52個)、最も多い車止めは?(四角の中に▽がくり抜かれた形の車止めで計13個。このうち緑色が10個を占める)というもの。クイズも交えたTさんの話に引き込まれて、子どもたちは集中して話を聞いてくれました。

スライドで新千里北町や車止めのことを紹介した後、実際に町に出て車止めを見ることに。9時20分頃、2グループに分かれて小学校を出発。

子どもたちと一緒に地域を歩きながら、公園の近くには動物型の車止めが多いこと、歩道に高低差がある場合、高い方には四角の中に▽がくり抜かれた形の車止めが設置されていること、消防車が入る場所、防火水そうがある部分には取り外しのできる鉄パイプが車止めになっていること等を紹介していきました。
車止め歩道の出入口の中央に設置されていますが、一ヵ所、歩道の隅の方に設置されているアシカの車止めがあります。これは、車イスの方のために位置をずらして設置しなおされたものだというエピソードを紹介。まち歩きに同行されていた担任の先生は、「大人たちが君たちのことを思って残してくれた車止め。君たちも大人になったらこのことを思い出して、子どもたちのために車止めを残して欲しい」という話をされていました。

車止めの前で紹介している時、ちょうどゴミ収集車が通りかかりました。当然、ゴミ収集車は車止めのある歩道には入って来ません。ゴミ収集車が通りかかってくれたことで、新千里北町では歩車分離を考えて道路システムが計画されていることを、子どもたちは身をもって体験できたのではないかと思います。

千里ニュータウンは当初、「一団地の住宅経営」という法律に基づいて開発されました。この法律は団地を作るための法律ですが、千里ニュータウンは単なる団地ではなく、住宅都市を作ることが目指されていました。
そこで途中から「新住宅市街地開発法」(新住法)に切り替えて開発が行われることになりましたが、日本で初めて「新住宅市街地開発法」が適用されたのが新千里北町。この意味で新千里北町は日本で初めての町と言えます。そして、新千里北町には2ヵ所、「新住宅市街地開発法」の適用を表す看板が残されています。歴史的な看板であるにも関わらず、放置されているため文字が読みづらくなっているのは残念ですが…
看板の1つは出前授業のコース途上にあったため、この看板の説明を行いました。「新住宅市街地開発法」の詳細は説明できませんでしたが、子どもたちには、自分たちが住む町が最初の町であることが伝わっていればと思います。

50分ほどのまち歩きを行い、再び北丘小学校へ。最後に子どもたちから車止めについての感想を聞きました。
子どもたちからは、車止めについて「最初は邪魔だと思ってたけど、役に立つものだとわかった」、「北町には初めてのものがいっぱいあるとわかった」などの言葉が。「大きな本」にも車止めについての感想を書いて貼ってもらいました。
「北町に残したい車止め」を投票してもらったところ、投票数が多かったのは四角に半円形がくり抜かれた形のもの(14人)、カメ(10人)、キリン(8人)の順番。
半円形、カメは新千里北町には1つずつしかないという説明をしたことが、多くの子どもたちが投票した理由だったようです。半円形に対しては「かまぼこみたいな形 なぜなら世界1こしかないから」、「世界に、1つだけの、車止めがのこしていきたい。世界に、一つだけだからのこしたい」という意見。カメに対しては「かめは、1つしかないから残して欲しい」、「かめが〔ポケモンGOの〕ポケストップだからのこしてほしい」、「ぼこぼこしておもしろいし、とびばこになる」、「家の近くでよく遊んだから」という意見。キリンに対しては「小さい子がすべり台にして遊べるから」、「小さい時、すべり台にして遊んだから」などの意見がありました。
この他、投票した子どもは少なかったですが、牛に対して「むかしからず〜っと毎日見てるから」という意見、アシカに対して「地いきの人が車いすの人の事を思って場所をかえてもらったから」、「みんなの思いやりやすんでいる人のおねがいであるから」とまち歩きで紹介した話をふまえた意見を書いてくれた子どももいました。
10時半頃、出前授業が無事に終了。

授業に参加されていた校長先生は、子どもだけでなく、地域の大人にも今日の話を聞いてもらいたいので、機会を作りたいと言ってくださいました。


この日の出前授業に参加して、次のようなことを感じました。

1つは車止めは、今の子どもたちにとっても大切な場所・ものになっていること。上で紹介しましたが、動物型の車止めに対しては「小さい時、すべり台にして遊んだから」、「家の近くでよく遊んだから」、「むかしからず〜っと毎日見てるから」という意見があり、子どもたちにとって遊び場であったり、馴染みのあるものになっていることが伺えました。なお、子どもに教えてもらったことですが、カメの車止めは最近話題のゲーム「ポケモンGO」の中でポケストップとされているようで、車止めは現在の遊び場所にもなっていることもわかります。

2つ目は、子どもたちの身体の大きさと、車止めの大きさの関係について。大人の目からすれば車止めは小さく見えますが、子どもたちと一緒にまち歩きをしたことで、子どもたちにとって車止めは決して小さくはないということ。小学校4年生の子どもたちでさえ、車止めは腰〜お腹ぐらいの大きさがあります。もっと小さい子どもにとっては、さらに大きいということです。子どもたちにとって、車止めは迫力をもって、目の前に迫っているのではないかと感じました。
だからこそ、子どもたちにとって、車止めは、「この先にある車に気を付けて欲しい」という注意喚起をしてくれる有効なものになっているのではないかと思いました。もちろん、注意喚起だけでなく、上に書いた通り車止めは子どもたちにとって遊び場、待ち合わせ場所、目印など様々な役割を担っています。

3つ目は、地域の自慢を伝えることの意味。新千里北町は「新住宅市街地開発法」が最初に適用された町であり、車に合わないように道路システムが工夫されています。そして、特徴的な車止めがたくさんある。このように自慢できることはたくさんあります。
地域で自慢できることを子どもたちにもきちんと伝えていくこと。地域を良くしていくためには、こうした足元からの活動が大切なのだと強く感じました。さらに、子どもたちにとっても、自分が住んでいる地域のことを知ることは、楽しく、興味深いことなのだと感じました。